2月, 2010 Archives


暮らしているだけあって、とりわけ地元雫石の事柄には興味がある。
とくに興味をひくのが、この土地固有の文化や歴史だ。
歴史といえば、時の権力者の歴史がかたられることが多いが、僕が注目するのは、一般庶民が歩んできた歴史、あるいは作り出してきた文化だ。
いわゆる民俗学というジャンルになるのかもしれないが、学問という冠は門外漢の僕にとっては少し敷居が高いので、今の暮らしをつくってきた原型を見たいという思いで、いろいろなことを見聞しているに過ぎない。
そんななか、先日から調べているのが、雫石の麻による伝統織物の「亀甲織」だ。
これはいわゆる「もじり織」の一種で、色糸を巧みに配色することで亀甲模様を浮かび上がらせたものだ。
亀甲織がこの土地でどのような経緯で生まれたかについては謎な部分が多いとされている。
しかし、「山伏が伝えた」「近江商人が伝えた」「藩政時代には献上品」だったなど、背景の広がりを感じさせるエピソードは少なくない。

また、亀甲織とは、一度途絶え、復活されたときにつけられた名で、かつては「汗はじき」と呼ばれていたという。
透けるほどに巧みに織られた「汗はじき」は、下着として用いられ、その名の通り「汗をはじく」着物として珍重されたらしい。

現在は、この汗はじきを織る技術は、雫石麻の会によって受け継がれ、美しい製品となって世に出ているのだが、僕はずっとオリジナルを撮影したいと願ってきた。
それが叶ったのが先日のこと。雫石町の民俗資料館に展示されている明治後期の「汗はじき」を撮影する機会を得た。
今回掲載した写真がそのワンカットなのだが、汗をはじく軽やかな着物をイメージしてライティングを組んでみた。
するとどうだろう。ファッション性の高い現代の洋服にも負けず劣らずの強い存在感を放ってくれた。

「汗はじき」の美しさは、手仕事の揺るぎなさそのものであり、また、人間が生きていくうえで不可欠な「衣」の普遍性をも示しているように思う。


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集英社文芸サイト「RENZABURO」にて、フォトストーリー「小さな伝記」を連載中です。
北の風土から拾い集めた小さな物語たちです。もし、僕の作品等にご興味のある方はこちらをのぞいてみてください。
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祭りへの旅

2月 15th, 2010

ここ数年、北東北の祭りや年中行事を追っている。
「rakra」という雑誌で『祭りの余韻』という連載を持っていることも祭りの撮影にでかける理由のひとつだが、祭りは今、ライフワークのひとつへと成長している。
祭りや年中行事に何を求めるか。それは人によって異なるだろうが、僕は祭りを通じてこの土地の深層となる部分をのぞき見たいと考えている。
この土地がどういう価値観や思想を経て、今に至ったか。あるいは、なぜ、この現代であっても祭りが必要とされているのか。
堂々巡りが定められたかのような問いではあるが、祭りの向こう側、あるいは原点を見つめ続けてこそ、この土地本来の姿を知ることができるのだと思っている。


もうすぐ旧暦の1月6日(今年は2月19日)。「サイトギ」が行われる日も近い。


「サイトギ」とは、二戸市似鳥八幡神社で行われる祭りのひとつで、いわゆる火祭りにカテゴライズされる。
クライマックスは激しく燃える井桁に組まれた薪を裸の男衆が丸太で炎を叩くシーンである。このときに舞いあがる火の粉の舞い具合でその年の作柄や天候を占うというものなのだが、ほとんど炎と呼んでよいほどの大量な火の粉が漆黒の夜空に吸い込まれていくさまは、言葉に表現できないほどの激しさと美しさを併せ持つ。
この炎の迫力に圧倒されながら、僕が思いを巡らせたのは、「火」がもっともっと強大で、人は畏れを抱きつつも「火」とつきあっていた遠い時代のことだ。
その時代、炎とは人間が触れることのできるもっとも大きな神秘だったのだろう。
おそらく、そういう時代があったからこそ、こうした火祭りが行われるようになったのだ。
そして、その時代、人は火に何を託したのだろうか。



男衆が掛け声とともに丸太で再び火を叩く。
舞いあがった大量の炎の粒が、空中に放たれ、凍えた大気を大きく吸い込んで、次の瞬間には消えていく。顔を夜空に向け、炎の明滅を追い続けていると、視線は闇の中をどこまでも進んでいくようだ。

ふと、自分までも夜空に吸い込まれていくのではないかという錯覚を覚える。
 火を自らの手で自由に操れる能力を得たこと。その幸福とひきかえに人は何を失ったのだろうか。サイトギは、見る者を遠い記憶の旅に誘う。


サイトギ情報
http://www.iwatetabi.jp/event/detail/03213/228.html

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